アニオタのための「カメラを止めるな!」微ネタバレありレビュー
「カメラを止めるな!」を見て、とても面白いと思った。でも、じゃあどんな要素が響いたから面白いと思えたのか。それを、普段アニメを見るときに評価している要素から考えてみたい。
というのも私は普段、映画を全然見なくて、他の映画と比べたり喩えたりできない。普段はアニメを見てる。だからアニメで考える。
「カメラを止めるな!」、周りで絶賛してる声しか聞かなかったから期待値MAXで見に行ったけど、それを上回る面白さだった。なんなんだあれ。
— もひもひ (@mo_himo) August 26, 2018
↑まあ言いたいことはこれだけです。
私が「これは神作品!」って自分が言うアニメの特徴として、「脳みそフワフワゆるゆる日常系アニメ」とか「主演声優が花澤香菜」みたいな外れ値を除くと、以下の3要素があると認識している。
1.キャラ立ち
主要な登場人物たちのキャラクターが立っているか。一人ひとりの生き方の”違い”が伝わる描き方がされているかどうか。
これは、主要な登場人物が少なければ少ないほど満たしやすくなるし、多いと難しくなる。その分、登場人物が多くてかつそれぞれ違った生き方が描かれる作品はすごい。パッと浮かぶところだと「響け! ユーフォニアム」がある。
2.それぞれの正義
登場人物たちの間で対立が描かれている場合、主人公vs悪役という構図にするのは容易い。一方で人にはそれぞれ正義があるはずでどちらの言い分も納得できる形で描かれているとなお良い。し、それが2者ではなく数が増えれば増えるほど難しいし、面白い。パッと浮かぶところだと、「サクラクエスト」「SHIROBAKO」がある。
3.伏線の回収
オタクは伏線の回収が好きな生き物である。過剰なくらいに些細なものまでぜーんぶ綺麗に回収してくれるアニメが好き。パッと浮かぶところだと、「四畳半神話大系」「Charlotte」(「ひぐらしのなく頃に」も入れたいけどこれはアニメより原作のが好きだったので割愛した)とかがある。
で、この3つの要素それぞれに「カメラを止めるな!」はナイスに合致してた。
1のキャラ立ちなんて最たるもので、あそこまで1人1人の個性が立ってるのはすごかった。し、2の正義も、正義というほどでもないけどそれぞれの事情があって、複雑に絡み合ってるのがスッと頭に入るように描かれてて良かった。
3の伏線については、抽象的にネタバレを含めて言うけど、そもそも後半は全て伏線の回収に充てられるシーンになるわけで、前半を見ているときには「伏線かな?」とはゆめゆめ思わなかったような些細な違和感レベルのインシデントまで全て回収されるのは見ていて本当に面白かった。
あとはさらについでにいうと、「恋愛」と「人の死」というテーマにほとんど触れられてないのが良かった。これらのテーマを取り上げ、インスタントにエモーションを消費させる作品を手放しには評価し難い。
「(略・とある)小説には優れた点が二つある。まずセックス・シーンの無いこと、それから一人も人が死なないことだ。放って置いても人は死ぬし、女と寝る。そういうものだ。」
まさしくこの点でも、「カメラを止めるな!」は良作品だと言えるのである。なお最後に、村上春樹氏の作中にはセックスシーンと人の死が頻繁に描かれていることを付記し、筆を置く。