ハルヒの聖地へ、長門有希のモデル? が書いたメッセージを見に行く

涼宮ハルヒシリーズは、我々平成エヌ年生まれのオタク*1にとっては特別な存在だと思っている。

思えば初めてコミケに行ったのはハルヒの同人誌を買いに行くためだったし、「キョンの口調を真似たことがある」「禁則事項です、と言ってみたことがある」「大学に入学して、SOS団の新入生歓迎に行ってみたら思いの外リア充くさかったので退散したことがある」などはいずれも、他ならぬ私が経験した道だ。

憂鬱、溜息、退屈、くらいまではハルヒ派と長門派がそれぞれ一定の勢力を保っていたが、『涼宮ハルヒの消失』で一気に長門有希に惹かれた人は多い。ルイズの本名と同じくらい流暢に、長門有希の正体が暗唱できる人は多いはずだ。

そんな長門有希にはモデルが実在するという説がある。元ネタは何を隠そう『涼宮ハルヒの消失』原作で、「あとがき」にこんな記載がある。

高校時代、僕は一瞬だけ文芸部に所属していた。メインの部活動が他にあったので足を向けるのは一週間に一度もあればいいほうだったが、もともと週一でしか開いていなかった。部員が一学年上の女子生徒一人だけだったからである。僕が初めて門を叩いたとき、眼鏡をかけた理知的な顔つきの彼女が唯一の部員で部長で先輩だった。その先輩と当時の僕が何を話したのか、何か話すことがあったのか、全然覚えていない。ひょっとしたら何一つ話などしなかったのかもしれない。
(中略)

三年生になると先輩は部活を引退して受験勉強に専念するようになった。期を同じくして新入部員が五人くらい入ってきた。なぜだか解らない。もう一つの部活のほうが圧倒的に楽しくなっていた僕も間もなく文芸部に行かなくなった。
先輩とは彼女の卒業の日に会った。そこでの会話も記憶にない。たぶんあたりさわりのない会話をして淡々と立ち去る後ろ姿を見送ったのではないだろうか。
その先輩の名前を思い出すことができない。きっと先輩も僕の名前を覚えていない。だけどあの時そこに誰かがいたことは彼女も覚えているんじゃないかと思う。
僕がそうであるように。

 

谷川流涼宮ハルヒの消失株式会社KADOKAWA、2004年、p.253-254

 で、この長門有希のモデル? の人にはややエモなエピソードがあって、ハルヒの聖地となっている喫茶店の雑記帳について、とある新聞記事にこんな一節がある。

「谷川君夢叶えたんだね。アニメのハルヒを見ていると、あのころの気持ちを思い出して懐かしく楽しんでいます」

谷川が西宮北高時代に所属した文芸部の一つ上の先輩と名乗る人がひっそり寄せたメッセージである。

このややエモなエピソードがずっと好きで、このメッセージをぜんぶ読んでみたいなあとずっと思っていた。ワニより先に死ぬかもしれない私にとって、せめてこのメッセージを読んでから死にたいと思い、聖地の兵庫県西宮に向かった。

 

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阪急電車に乗って西宮へ。

この洒落た車体といえば、思い出すのはあの小説であろう。

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有川浩の『阪急電車』もまた、平成エヌ年生まれの(特に女オタクには)かなり突き刺さっている作品であるが、その舞台である阪急今津線も通る駅がここ

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西宮北口駅」である。

この右にある時計台はハルヒで時折出てくるモニュメントであるが、「西宮北口駅」までで駅名であるので

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西宮北口駅の南側には「北口南阪急ビル」が立地するなど、倒錯したネーミングが際立つ。

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アニメ1期放映から14年(14年!?)経っているということで、街なかに残る聖地の面影はわずか。

西宮北口駅から徒歩数分のところに、『喫茶屋 ドリーム』がある。

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以前はファンらがフィギュアを並べる一角もあったそうだが、店舗が移転したこともあり、今となっては巡礼に来るオタクの姿もなく、地元の中高年がまったりとくつろぐ喫茶店である。

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新聞や週刊誌が並ぶ本棚にひっそりと、「雑記帳」はあった。

今のところシリーズ11冊目。昔の雑記帳が見たいと店員さんに頼むと、快く店の奥から引っ張り出してくれた。

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なぜか「響け!ユーフォニアム」の袋には過去の雑記帳がずっしりと入っている。

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1冊目から順に、該当のメッセージを探す。

で、こちらがシリーズ2冊目。

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結論から言うと、この2冊目のとあるページに該当のメッセージがある。

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谷川くん 夢をかなえたんだね おめでとう

私の高校時代と言えば 何をしてたんだか分からない時期でした

25年もたってふり返ってみると あの 何だかわからないあの時が大切な時だったんだね

あの時に人って 作られていたのかも・・・・

私は今でも あんなかんじ 携帯ももってないし

アニメのハルヒを見てると あのころの気持ちを思い出して なつかしく 楽しんでいます

またどこかで会えるといいね お元気で

 西宮北高元文芸部 ひとつ上の先輩

茶店でひとり、うるうるしながら何度も読み返した。「あの 何だかわからないあの時が大切な時だったんだね」がとてつもなく良い。

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帰り、西宮北高校を見に行った。

西宮は山と海が近い町で、校門の前の坂道からは市街が一望できた。坂道のある町は物語が生まれやすいのかもしれないと思った。

*1:主語が大きい